UIデザイナーに必要な「基準を持つ」こと

2016.12.22

2016年を振り返って

2016年の活動を振り返れば、長谷川 恭久さんの Podcast Automagic で「デザインの仕事の向き合いかた」をテーマに話し合ってみたり、FRONTEND CONFERENCE 2016 では「これからのデザインを考える」と題した講演でデザイナーの役割について考えてみたり、デザインというものに正面から向き合うことが多かったように思います。

UI デザインの領域としては、関西で UI Lab というコミュニティを立ち上げたり、デザイナーだけでなく一般の方にも UI,UX の基礎的な勉強会を無料で開くなど、UI デザインのセオリーや設計手法といった「学び」の活動も始めました。いずれもやってよかったと思える結果だったのでこれらは継続したいと思っています。

それらの活動を通して、スキルではなく UI デザインに必要なマインドは何か、ということを考えるようになり、一つの気付きがありましたので今回はそれを言語化したいと思います。

UI デザインと他のデザインとの違い

UI デザインは、UI コンポーネント(ボタンやラベルなど)の認知とユーザブル(使えること・役立つこと)が前提にあります。また、OS などのガイドラインという制約があったり、もしくは自らデザイン原則を設けるなど、UI を設計する「意図が明文化できているもの」が持続可能な UI であり良いとされています。

ただし、UI からは設計側のあしらいや存在は消えているべきで、ユーザビリティ以前にユーザーが自然に扱えることが最適な UI デザインであると私は考えています。UI デザインは主役ではない、ここが他のデザインと大きく違う点です。

使いにくい UI が生まれるのは

ビジネス上、機能を増やさねばならず追加することになった多くのメニュー、後の仕様変更に伴い、分かりにくくなったことで説明を表記せざるを得ないテキストなどは、まさに自然ではない UI です。これらは当初の設計にたいし、変更に対応できなくなった継ぎ接ぎの結果です。また、他の類似サービスから UI パターンを参考にし自社のものに当てはめたりすると、変更に対応できないものに陥りがちです。他をあまり深く意識せず、自社の世界観を守り貫くのが UI デザイナーの役割でもあります。

持続可能な UI にするために

前述のとおり、ガイドラインやデザイン原則を考えることは持続可能な UI にするために有効ですが、明文化のために言葉にする、コミュニケーションを取るといったことが求められます。UI デザイナーの仕事の時間は、作ることやユーザビリティテストよりも、明文化に多くを費やすことだと言っても過言ではありません。

コミュニティやイベントで「そのためにはどう研鑽を深めればいいのか、語彙力そのものに課題を感じている」という意見が多くありました。それに必要なのは何が良くて、何が悪いかの「基準を持つこと」が第一歩なのではないかと思います。

「基準を持つ」こと

UI をまとうアプリやサービスは、業務系や一過性のものを除き、日常、暮らしの中に融け込み、ずっと使ってもらえる、愛されるものになってほしいものです。日常であるべきことは飽きの来ないことであり、かつ他のものよりも洗練されていることです。UI にあしらいや設計者の存在が消えていなければならない理由はここにあります。 そうしたものをデザインするデザイナーにとって必要なのは、過去の講演で私は「感性を磨く」と表現しましたが、少し曖昧な表現でした。どう感じるのか、の思考に必要だったのは、これまでの自分の記憶と新しいことの違いに気付ける、これが自分の「基準を持つ」ことです。アプリやサービスだけでなく、日常にあるものが自然に使える、使っていられるのはなぜなのか?をいつも意識するだけで、その積み重ねが自分の基準になっていきます。基準を持つことができれば、そこで感じることを言葉で説明することができます。

多くのユーザーは UI を操作するとき、これまでの経験則から使えるかどうかを瞬時に判断します。ユーザーにも基準を持っているということですが、UI デザイナーの仕事は、それを先周りしユーザーを自然にゴールへ運ぶことです。さらに基準を超えるものに出会えば、それは素晴らしい、感動する体験に変わります。そのためには常に正しい基準を持ちながら、設計を言葉にしていくことがデザインの力となっていきます。

大切にしたい日本人の感性

日本人の感性は欧米に比べ素晴らしいと言われるのに、自分が他のものと違っていないかを気にしてしまうのもまた日本人です。海外で流行のアプリやサービスの UI を見ては、疑わずに自分もそうしなければならないのでは?と思ってしまいがちです。確かにデザインやインタラクションなどは他のサービスから学ぶこともたくさんあります。大切なのは他のパターンを単に採用するのではなく、自分が良いと感じたことを言葉にすることです。それが日本人が始めから持っている大切にしたい感性と所作なのだと思います。他がやっているから、いい感じ、クールで格好いい、という判断基準だけでは必ずしも良い体験にはつながりません。私たちの言葉で基準を持つことから始めましょう。

この投稿は、UI Design Advent Calendar 2016 第22日目の記事です。